「MULE VARIATION」TOM WAITS | 君、ちょっとCD棚の整理を手伝ってくれないか。(仮)

君、ちょっとCD棚の整理を手伝ってくれないか。(仮)

中学から買い始めたCDがあまりに増え、自分で何を持ってるか把握出来なくなってきた。そのため同じCDを2枚買うという事件を産むこととなる(4回)。

この悲劇を五度繰り返さぬよう一枚一枚確認していこうという、

ブログにするほどでもない内容のブログなのだ。

mulevariation
「ウチでもね、湾岸戦争があってね」

「はー、君んチで湾岸戦争が」

「こないだも奥さんと大喧嘩して」

「それが湾岸戦争と何の関係があんねん」

「奥さんがお椀を僕に投げてやな、
 それが僕にガーンと当たった。
 お椀がガーンで湾岸戦争やがな」


以上は在りし日の夢路いとし・喜味こいしのネタの一部(うろ覚え)である。

第二次世界大戦も広島原爆をも乗り越えたお二方にとっては、
湾岸戦争などシャレのネタ程度でしかなかった様子。

そんな湾岸戦争の映画が只今公開中。
タイトルは「ジャーヘッド」。

という訳で、
以下にはその感想を書くので、
まだ観ておらず、尚かつこれから観ようと思っている人は、
水分補給を怠らずに待機!!



俺は湾岸戦争と聞くとまず上記のいとこい先生のネタを思い出す。
つまりニュースとしては、
多感な高校時代に勃発したにも拘わらず、
ほとんど印象が無い。

唯一覚えているのは、
ミサイルに搭載されたカメラが
倉庫だか基地だかの建物にぶつかる瞬間を捉えた映像。
あの映像が象徴するように、
近代の戦争は大量殺戮兵器が戦況を決するらしい。
(アメリカだけに限った話かもしれんが)

では、現場では兵士たちは何をしていたか?

この映画を観る限りでは、
彼らは何もしていない。
ただただ、退屈と緊張に耐えていたようだ。

さんざん上官から罵詈雑言を浴び、頭は空っぽになり、
死人が出る程過酷な訓練に耐え、
人殺しの技術を覚え、
いざ戦場に出てみれば、
砂しかない場所で永い永い待機。

男しかいない状況で隔離されれば、
やる事と言や、
オナニーと下ネタと体力に任せた遊びとオナニーしかない。
俺の学生寮時代を思い出す。
(サム・メンデスは名作「アメリカン・ビューティ」で、
 「男はシコるもの」という視点を固定した。グループ魂か。)

そう、確かにこの作品は主人公の若かりし頃を描いた
青春映画と言えなくもない。
ただこの映画が青春映画で無いのは、
彼らのいる場所がイラクにほど近いサウジアラビアだからだ。
次の瞬間死ぬかもしれない戦場だからだ。

ただ、遂にフセインの声明と共に戦争は始まるが、
歩兵が何をする暇も無いまま、戦争は終結する。
一発の銃弾を撃つ事もなく、
一人の敵兵と出会う事もなく。

劇中、ベトナム戦争(映画)との対比が多く見受けられるが、
ベトナム帰還兵は戦地で人を殺し、ヒーローと成り得た。
それはそれで大問題なのだが、
この映画の兵士たちはそれさえも許されない。

ミサイル等を基とした近代型戦争は、
歩兵の虚しさを肥大化させるのだ。


そんなモヤモヤを抱えた
人の殺し方を叩き込まれた帰還兵が
今のアメリカには沢山居る、
という事になるのだが、
それってもしかして、
物凄く怖い事なんじゃないだろうか。


音楽は、アメリカ兵の空っぽな頭を象徴するように、
ボビー・マクファーリン、パブリック・エナミー、
ニルヴァーナ、C&C、T.REX、ドアーズなど、
微妙にベター過ぎる選曲なのだが、
ラスト近くにはトム・ウェイツの「兵士の持ち物」という曲が流れる。

何となくだが、最近のアメリカ映画、
トム・ウェイツかければ何とかなると思ってないか?

「兵士の持ち物」が入ってるアルバムは持って無いんで、
代わりにこれで。


初期の頃は形式的なブルースを演奏していた彼だが、
最近は「そもそもブルーズなんて
何でもありなんじゃねぇの?」とばかりに、
プリミティブでバーリトゥードなブルーズを聴かせてくれる。

1曲目「BIG IN JAPAN」って
ベンチャーズとかMr.BIGとかの事なのかなぁ。


Tom Waits
Mule Variations