先日、チケットぴあに寄った際。
B.U.Pがチケット購入の手続きをしてくれてる間、
時間を持て余した俺は、
その傍らで片足を上げ靴の裏を覗き、
溝に溜まっている土塊を見つめ、
「うんこかなぁ、うんこじゃなきゃいいなぁ」
などと考えていた。
すると、どこからかご婦人から
「痛いんですか?」
と声を掛けられた。
「あ、いえいえ、そういうんでは」
うんこかどうかの確認です。
「いえね、私ちょっとハンドパワーやってるもんで、
何かお役に立てればと思って」
ちょっとハンドパワーやってる。
お花やってる、ペン習字やってる、くらいのライトさで
ご婦人は仰ったが、
ハンドパワーとはそんなにポピュラーなものなのか。
さて、その時に取ったチケットが、
京都音楽博覧会とGROUND ZERO IN UMEDA。
最近また物書き三昧でブログに割く時間もあまりないので、
ちゃっちゃとそのレポートです!!
ハンドパワー!!
9/22。
京都の空は曇り、しかし心配された雨にも降られずフェス日和。
連休中の京都駅は人でごった返す。
京都音博、その会場は梅小路公園という、
京都駅から10分ほど歩いた所。
アクセスは非常に楽だが、
市街地のため、でかい音は出せない。
着流しスタイルのくるりの挨拶もそこそこに、
トップバッターはふちがみとふなと、なる二人組。
正直全く知らない、
絶対にオーバーグラウンドには出てこないような二人。
ウッドベースの男と、歌とピアニカやピアニカっぽい何かや、
その他おもちゃみたいな楽器担当のおばちゃんが奏でる
全人類に優しい音楽。
なるほど、この人らの登場で音博が
どういうものか分かった気がする。
今日唯一の洋楽、ベン・クウェラー。
博覧会なんだからもっと外人音楽があってもいいもんだが、
色々と事情もあるんだろう。
アコギ一本で、ロックンロールを掻き鳴らす。
途中からスライドギターの人も出てきてた。
時にフォーク的であったり、カントリー的であったり。
もうちょっと小さい規模で観たい音楽だったな。
矢野顕子。
言わずと知れた、客を観ながらのピアノ弾き語りスタイル。
非常に気持ちいいのだが、
それ故、ビニールシートに寝て聴いてたら、結構寝てしまった。
くるりの「Baby,i love you」をカバーしてたんだが、
完全に矢野節にしてしまっており、原型をとどめてない。
歌詞だけが一緒の別の曲。
エハラの物真似を思い出す。
BO GUMBO3。
音泉魂でのライブが素晴らしかったんで、前方で観る。
が、この日は近隣住民に気を使い、
ダンサブルな曲は無し。
feat. ラキタという事で、どんとの息子さんがギターで参加。
DNA的にはオリジナルに限りなく近い、などと。
ただラキタ君、ギターも歌もそれほど聴かせられる程ではなく。
どんとの息子だというだけで、
膨大な期待を掛けられるのも大変だろうが。
でも、岸田に大学への推薦文を書いてもらえる程に、
その周囲の環境は整っている、
頑張ってくれたまえ。
奥田民生。
サンプラーを触り、自分でオープニングを流す。
そして、自分でつまみを絞る。
RSRの時と同じく、
作務衣こそ着てないものの、アコギ一本のひとり股旅スタイル。
近くを走る蒸気機関車の音にイチイチ反応して笑いを取る。
数曲やった処で、岸田登場。
「息子」と「ばらの花」。
「ばらの花」はトリビュート盤にも入れてるし、
RSRでもやってたんで、予想内だったが、
ここで「息子」とは。
ライブで「息子」聴いたのって初かも。
もしや、ラキタへ向けてなのか。
ラストは「CUSTOM」。
俺が民生の曲で、いや、全ての音楽の中でも
五指に入れる好きな曲。
大概民生のライブではやってくれるが、
この日のそれは頗る素晴らしく。
あと、矢野さんも居るからか「ラーメン食べたい」もやってました。
そして、その参戦発表後、
様々な物議を醸し、期待と不安を生んだアクト、
石川さゆり。
彼女が参戦したからと行くのを辞める旨の書き込みを見たのだが、
その人にお前は馬鹿だなぁ、と言ってあげたい。
正直、今回の音博、石川さゆり一人のためにあったといっても過言ではない。
そこに居る殆どが演歌のライブなど初めて見る人々、
ステージにビッグバンドがセッティングされていくだけで、
ざわめきが起こる。
客電が落ちる。
すると、バンドが一斉にベートーベンの「運命」にも似た強烈なイントロが、
夕闇を切り裂いた!!
うおおおお!!
最早地響きのようなどよめきが全会場から巻き起こる。
そして、艶やかな着物を纏った石川さゆりがライトに照らされながら現れた。
うおおおおお!!
上野発の夜行列車降りた時から、
うおおおおおお!!
ああああ~~~、(ファルセット)
うおおおおおおお!!
イチイチうるせぇよ!!
とにかく、その一挙手一投足にどよめく。
勿論、俺もその一人だ。
最初こそどこかそのどよめきに笑いみたいなものが含まれていたのだが、
徐々にその成分が薄まるのがはっきり分かる。
彼女が本物、Real Dealである事を全員が数分で認めたのだ。
MC、出番前イチローから電話があったと彼女は語る。
「僕シアトルに着いたんですけど、そっちは今どこですか」
「今、くるりとか奥田さんとかが出てるロックフェスに来てるの」
石川さゆりとイチローが電話でくるりの話をする、
という規模のでか過ぎるMCに唖然とする。
イチローが出囃子に使っているという「天城越え」。
その色香たるや!
その眼力たるや!
歌とは喉から出るものだけに非ず。
目、指先、体全身から発するものなのだ。
歌とは音楽のみを聴かせるものに非ず。
その歌、もしくは歌い手の人生全てを聴かせるものなのだ。
この日、我々は生まれて初めて、演歌の意味を知った。
とにかく、こういう機会を作ってくれたくるりに感謝。
感謝の意を持って、彼らを迎える。
毎回この音博、くるりのセットリストは実に渋いらしい。
確かにこの日も大ヒットチューンと呼べるものは殆どなく、
アルバム曲、もしくはシングル曲でも静かなものが並んだ。
それが物足りないかと言うとそんなことは決して無く、
ディストーションが無い中で、
如何にくるりの作るメロディが素晴らしいかが堪能できた。
特に「京都の大学生」「さよなら春の日」「宿はなし」辺りは白眉。
途中、さゆりちゃんが出てきて、
彼女の為に渾身の力で書いたという新曲をデュエット。
でも、既存の曲を歌う石川さゆりも見たかったな。
9/23。
元バナナホールを改装して出来た
umedaAKASO。
入ると、まだ新築の匂いがする。
Mちゃんに因れば、
OSAKAの逆読みでAKASOなんだとか。
他に何か無かったのか。
ザ・ビートモーターズ。
この日は50回転ズ以外は全てお初。
当然このバンドも初めて見る。
思った程ビートでモーターな感じでは無かったが、
ボーカルの声がでかくて良い。
エレカシ、フラカンぽさも有り、
バンド全体に華が出れば大化けしそうな雰囲気。
Who the Bitch。
フロントにビッチ二人と男ドラムのトリオ編成。
ポップでロックンロールで、音も厚いし悪くないのだが、
MCで必要以上に大阪をアピールしたり、
生きてるって最高、などと言ったりと、
要らん事を言い過ぎる。
MISONO感が強いというか。
熱いのは悪い事じゃ無いが、
アピールのポイントを間違えると大怪我するぜ。
キャラだけで言えばこの日一番キャッチーなんだから、
クールに決めれば最短で上位を狙えるはず。
Sawagi。
ロックンロール系がひしめくこの日の面子で、
唯一毛色の違ったインストダンスミュージック。
最近流行の80年代的なエレクトロ的な流れを汲む一つなんだろうか、
変なグラサンにピカピカ光る何かを付けてたり。
音楽は非常にカッコ良く。
ダンス音楽と言えば、画一的なリズムというイメージがあるが、
ここは生バンドという事もあり、随所にグルーヴもきっちりあって、
気持ちよく踊らせてくれた。
OKAMOTO’S。
取り敢えず、ダウンタウン浜田の息子がいる、
という事しか情報が無く、
少し心配していたのだが、結果的にはこの日のベストアクト。
外人らしきボーカルのミックさながらなパフォーマンス、
ギターのカッティング、グルーヴのあるベース、
みな演奏力が異常に高い。
中でも凄いのがドラム、
中学生くらいの少年にしか見えないのだが、
(Mちゃん曰く、びっくすもーるんの小さい方)
そのドラミングたるや、決して人間の動きとは思えない!
とんでもない奴らが出てきた。
ストーンズとWHOの合体とでも言おうか。
それがまだ10代ってんだから、
日本も捨てたもんじゃないですよ。
バンド名は、岡本太郎を敬愛してるから、らしい。
黒猫チェルシー。
「色即ぜねれいしょん」を見る限り、
渡辺大知の素はあっちなんだろう、と思うんだが、
実際はどうなんだろう。
とにかく、映画の続きとして、このライブを観る。
彼らのライブはまだエンターテイメントの体を成してない。
曲や演奏力は良いが、ステージでの芸として未完成。
逆に言えば、その無軌道っぷりが彼らの現時点での魅力。
映画よろしく、まだ彼らは童貞なのだ。
社会とうまくコミット出来ず、
ステージを唯一の捌け口として、
溜まってる精力をぶちまける(ように見える)、
是即ち、童貞バンドである。
OKAMOTO'Sや50回転ズは、
客が望んでいるものを提供し、それを超えてみせる、
つまりエンターテイメント。
手練手管でベッドへ誘い、官能の世界を見せる、
非童貞バンドだ。
しかし、だからこそ渡辺大知は、
恐らく今現在、世界で一番美しい存在である。
彼がこれから様々な経験を経ても尚、
この美しさを失わないでいれば、
その時彼はロックンロールスターになれるだろう。
彼には前日の民生の「息子」を捧げよう。
ザ・50回転ズ。
男女問わず場内はおかっぱが沢山おり、
殆どの客が彼ら目的であったことはライブ前から分かったいた。
場内は今までの空気が嘘のように大盛り上がり、
ロックンロールの最前線に居るものと、
これからの行こうとする若者との違いを見せつけた。
「シルバーウィークなんてジジ臭ぇ、
これからはロックンロールウィークに変えようぜ!」
という訳で、ロックンロールウィーク終了。
衝撃度に順位を付けるならば、
1位 石川さゆり
2位 OKAMOTO'Sのドラマー
3位 渡辺大知
くらいかな。
くるりの新譜。
一聴、地味なんだけど、
ちゃんと聴くとやっぱり良いんだよなぁ。
岸田はあともう少し喉が強ければ、
最強になれるかもしれないのになぁ。
民生やさゆりちゃんと一緒に歌うとその差が気になるのよな。